野村克也夫妻の命を奪った心臓の病、本当は予防も治療もしやすい?
心臓・血管の病気の専門医が明かす病の真実-②
■脈拍と血圧を観察するだけで血管の炎症がわかる
脈拍と血圧を観察することで、心血管の状態を知ることができます。
心血管の病気を引き起こす慢性炎症が続くと血管が硬くなったり、一部の動脈が狭くなったりします。すると、脈拍と血圧が少しずつ上がっていくのです。
血管が硬くなると血管がしなやかさを失うため、心臓が血液を送り出す際の「上の血圧」が上がります。したがって、血圧が上昇傾向にある方は血管が硬くなっていると推測できます。
上の血圧に比べると忘れられがちな「下の血圧」からも血管の状態を知ることができます。
心臓が体に向けて血を送り出すと、血管は血液によって一瞬膨らんだ後すぐに縮んで血を押し返すのですが、この「押し返す」力が下の血圧の正体です。ところが、心臓のそばの血管が硬くなっていると血液を押し返す力が低下するため、下の血圧が低くなるのです。もちろん下の血圧に影響する要素は他にもありますが、血管のしなやかさもそのひとつだと覚えておいてください。
また、一部の動脈が狭くなると、その動脈の先にある臓器や筋肉に届く血流が減ることを防ぐために脈拍が上がります。
このように、長期的に血圧や脈拍が上がっている方は心臓や血管になんらかの問題が生まれている可能性が高いのです。だからこそ、日常的に血圧と脈拍をチェックする必要があります。
「ええ、毎日脈と血圧を見なきゃいけないなんて、面倒だな」と思われましたか?いいえ、そんなことはありません。
「脈と血圧を測る『だけ』で状態をチェックでき、病気を予防できるなんてラッキーだ」ととらえた方がいいでしょう。
脈と血圧の測定はとても簡単です。市販の簡単な計測機器を買えば、ご自宅で、時間もお金も手間もかからずに測ることができます。もちろん、まったく痛くありません。
計測が簡単であるということがどれほどありがたいかは、がんの検診と比べれば分かるでしょう。たとえば比較的患者数の多い大腸がんをチェックするためには、内視鏡をお腹に入れて調べなければいけません。
下剤を飲んでお腹を空っぽにするなど一日がかりの大変な検査になりますし、お金もかかります。痛みが伴う場合も少なくありません。たった一種類のがんを調べるだけでも、これほど大変なのです。
その点、脈と血圧だけでおおまかな状態をチェックできる心血管疾患は、とても予防しやすい病気だといえます。
■理想的な脈拍・血圧とは?
では具体的に、どのくらいの脈拍と血圧ならば余裕がある状態といえるのでしょうか?
先に答えを言うと、血圧は上が120以下で、かつ下が80以下の状態ならばOKです。また、脈拍は60拍(1分間に60回)がもっとも長生きできるといわれています。
ですが、血圧も脈拍も、もう少し数字が小さくても問題ありません。あまりにも極端な数字はともかく、血圧は低ければ低いほど、脈も遅ければ遅いほど心血管に余裕があることを意味しているからです。
たとえば、血圧の上が100を切っていてもまったく問題ありません。90でも80でも、特に症状がなければ問題はありません。もし血圧の低さが問題になるとしたら、出血や痛み、脱水などの影響で血圧が急降下するなどのケースです。あまりに血圧が下がると脳への血流が減り、立ちくらみを感じたり失神したりすることがあるためです。
しかし、そのようなケースは例外的です。また、血圧と同じように、安静時の脈拍数が60を多少、下回っても問題ありません。
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KEYWORDS:
『心臓・血管の病気にならない本』
著者:山下武志
日本人の半数は心血管疾患で亡くなっている!
血液を綺麗にし、心臓を鍛えて、健康に長生きする方法とは?
日本人の死因2位・3位※を占める心疾患と脳血管疾患は、両者を足すと死因1位のガンに匹敵します。また日本人の9割は不整脈を患っているともいわれています。
しかし、心臓や血管の病気はガンとは異なりメディアの注目度は低く、一般の人々の知識は驚くほど不正確です。著者はかねてよりその状況を憂い、正しい知識の普及に務めてきました。「心臓と血管の病気は慢性病」「年間2万人が命を落とす危険な不整脈=心室細動」など、「長生きして健康でいる」ために欠かせない、おだやかな血液と余裕のある心臓を作る習慣を伝授します。
著者は日本一の「不整脈」の名医と言われ、これまでテレビ『NHK健康チャンネル』や『世界一受けたい授業』など多数のメディアに出演しています。
※2017年度・厚生労働省調べ
目次
第1章 心臓・血管の病気は怖くない
第2章 心臓・血管の病気はこうして起こる
第3章 誰も知らない不整脈の真実
第4章 余裕のある心臓とおだやかな血液を手に入れる
第5章 心臓・血管の治療を成功させる